現在、日本人女性の9人に1人が乳がんに罹患しており、世界でも男女合わせて最も多いがんになっています。乳癌患者は今後も増え続けることが予想されており、そのため乳癌診療医のニーズはどんどん高まってきます。また、ホルモン療法、化学療法以外の薬物療法としても、CDK4/6阻害剤や血管新生阻害剤などの分子標的治療薬や、免疫療法など新しい薬剤がどんどん開発されるなど、治療対象として非常にエキサイティングな癌種でもあります。

 

薬物療法以外にも、遺伝子診療や乳房再建、放射線治療、アピアランスケアなど乳癌診療の内容は多様化してきています。島根大学医学部附属病院では、多様化する乳癌診療に対応するため、2023年4月に乳腺センターを設立いたしました。このセンターの中で、乳癌の診断から治療までを切れ目なく行うことが出来るようになりました。さらに進行した乳癌に対して、集学的な治療を行うことで治療成績の改善も望めるようになってきます。

 

乳腺センターでは国際治験(経口SERD)や国内臨床試験(治療効果を予想する探索的研究)にも参加しており、まだ臨床では承認されていない新しいお薬も使えるようになりました。先端がん治療センター田村教授からも腫瘍内科について学ぶこともでき、がん薬物療法専門医の資格も取得することができます。

 

研究についても、現在、乳癌幹細胞培養の研究を行っており、その成果を2023年12月のサンアントニオ乳癌カンファレンス(SABCS)で発表しています。患者の乳癌組織の中から、薬剤耐性でかつ様々な乳癌細胞へと分化する「乳癌幹細胞」を選択的に培養し、その性質、遺伝子発現、薬剤耐性をすることで、究極の個別化医療を実現することが目的です。科学研究費や民間の研究費(山口内分泌疾患研究財団など)を獲得しながら、継続的に研究も学ぶことができます。

乳癌診療医を選ぶ医師の多くは女性医師です。乳癌診療は緊急手術や患者急変があまりない診療科ですので、女性であっても妊娠、出産などのライフタイムイベントによってキャリアを途切れさせることなく、むしろそれを楽しみながら経験を積むことができます。島根県東部の4病院(島根大学医学部付属病院、島根県立中央病院、松江赤十字病院、松江市立病院)では同じ乳腺専門医カリキュラムを組んでいますので、どの病院で勤務しても満足いく研修を受けることが出来ます。

 

乳癌の診療に興味を持つ学生、研修医の方は、夏休みなどを利用して見学に来ていただいてもいいですし、センターに立ち寄ってお話をするだけでも結構です。まずは気軽にメールでご連絡ください。お待ちしています。

 

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