乳腺外科
乳がんを中心に、乳腺症、乳腺炎、線維腺腫、葉状腫瘍など乳腺疾患全般を対象として、診断、手術を中心とした治療、術後のフォローアップを行っています。乳がんと診断された方には、ベストな治療を患者さん個々の病状や希望に合わせて提供できるよう、日本乳癌学会乳腺専門医を中心としたチームで診療しています。
1. 診断
乳がん検診で要精査となった方や乳房のしこりに気がついた方などは、ぜひ当院乳腺外科の初診外来を受診下さい。紹介状はなくても診察は受け付けていますので、まずは乳腺外来に電話でお問い合わせください。
受診後は、まずマンモグラフィ、乳房超音波検査を行います。そこで異常があった場合は更に詳しい検査として、穿刺吸引細胞診、針生検、ステレオガイド下マンモトーム生検、乳房MRI、PET-CTを行うことがあります。
<穿刺吸引細胞診>
病変部に細い針を刺して、吸い出した細胞を顕微鏡で観察します。主に良性腫瘍の診断やリンパ節転移の診断に対して行います。体への負担は少ないですが、確定診断に至らないことがあります。
<針生検・マンモトーム生検>
針生検は、局所麻酔をした上で病変部に少し太い針をさして腫瘍の組織を取る方法です。超音波で採取部位を確認しながら行います。穿刺吸引細胞診に比べて多くの量を採取するため、確定診断が可能です。非浸潤性乳がんのように確定診断のためにより多くの組織量が必要と考えられた場合には、さらに太い針であるマンモトームで生検を行い、確定診断に至ります。
<ステレオガイド下マンモトーム生検>
マンモグラフィで石灰化のみを指摘された場合、超音波検査では病変の部位がはっきりしないことがあります。その場合には、ステレオガイド下マンモトーム生検を行います。専用のベッドにうつぶせで寝ていただき、マンモグラフィ撮影をしながら、病変部に針を刺して組織を採取する検査です。極めて早期の乳がんを診断することができます。
2. 乳癌の治療
乳がん治療は、大きく手術、薬物治療、放射線治療の3本柱から成っています。乳腺外科では手術と薬物治療の一部を担当しています。
<手術>
乳がんの手術には、乳房部分手術と乳房全切除術がありますが、当科では乳がんの進行度や患者さんの希望に応じて、乳房を可能な限り温存する方針で診療に臨んでいます。また当院は、2014年2月に日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会の実施施設認定を受け、インプラントを用いた乳房再建手術を形成外科と連携して行うことができます。
当院の手術の特長は、
- 整容性を重視した内視鏡補助下手術。
- リンフォCTシンチグラフィと蛍光色素法を併用し、より確実に低侵襲に行うセンチネルリンパ節生検術。
です。特に内視鏡補助下手術は、皮膚切開の部位を見えにくい腋窩や乳輪縁に置くことができます。より高い技術力が必要ですが、経験豊富な医師が担当いたしますので術後の整容性を高く保つことができます。
当院の手術数は、コロナ禍が緩和してから増加傾向になり、さらに4月に乳腺センターが設立されてからの半年間では74症例と急増しています。乳腺外科医を増員しているためまだ手術数を受け入れる余裕はありますので、できるだけお待たせせずに手術をすることが可能です。
<薬物治療>
乳がんの薬物治療にはホルモン療法、化学療法、分子標的療法、免疫療法があります。薬物療法は乳がんの治療の中でも最も治療成績に直結するものです。どの治療を行うかで患者様の予後が違ってきますので、治療方針については乳腺センター内でのカンファレンスでしっかり話し合って決めています。
特に先端がん治療センターの田村研治教授からは、国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科で薬剤開発や治験などに携わっていた経験と知識から、効果的な薬剤選択と安全な薬物療法を行うことについてアドバイスしていただいています。さらに、薬剤部、外来化学療法部、看護部など様々な部署と連携し、綿密な副作用対策を行っています。
<放射線治療>
放射線治療は単なる補助療法ではなく、治療成績を左右し患者様の予後を改善する重要な治療の一つです。放射線治療科では令和5年5月に新しい放射線治療機器が導入され、病巣には充分な放射線線量を投与し、かつ正常臓器への線量を低減することで副作用をより軽減できるようになっています。島根県は島嶼部や山間部も多くまた高齢者も多いため、毎日の放射線治療通院が難しい場合がありますが、当院ではそのような場合に入院での治療も行っています。出雲から少し遠いけれど当院で乳がんの治療を受けたいという場合に、放射線治療が障壁になる場合がありますが、入院での治療ができれば県内どこからでも来院いただき、手術、薬物療法、放射線治療が受けることができます。
このように乳腺センターでは、患者様を中心に各診療科が協力してベストな治療を安全に行うことができます。乳がんと診断された場合、ぜひ当センターでの治療をご選択ください。